サルビアの育てかた
 レイが俺の方を眺めている様子が横目に映る。真剣な声で、話を続けた。

「一つだけ、聞いてほしいの」
「なんだ?」
「ヒルスも、 自分のことを大事にしてほしい」
「……どういう意味だ?」
「言ってる通りだよ。辛かったら、私にも頼ってほしいの。私はいつもヒルスに支えてもらっているから」

 思いがけない話だった。もう一度彼女に目線を戻すと、レイはこの上なく柔らかい表情を浮かべている。
 内心、舞い上がっていた。レイからの優しい言葉を受け取っただけで、こんなにも心が躍るなんて。

 だが──レイはまだ十五歳だ。七歳年下の妹を支えていくのは当然のこと。俺がレイに心配してもらう必要なんてない。
 俺は自分の中に気持ちを閉じ込めてしまう。

「俺は平気だよ」
「でも……」
「お前と違って、もう大人だからな? それよりも冷えるな。そろそろ戻ろうか」
「うん……」

 レイはぎこちなく頷いた。
 家に向かって歩き始めると、レイの握る手の力が若干強くなる。
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