サルビアの育てかた
 その様子を眺めていたレイは、またいたずらっぽく笑う。

「そっかあ。ヒルスもお父さんのこと可愛いって思ってるんだね!」
「……は?」
「だって私と同じ気持ちなんでしょう?」
「あのな、そうじゃなくて。みんなでこれからも協力していきたいってことだよ」

 レイが可愛らしく冗談を口にすると、場の雰囲気がパッと明るくなった。

「本当に……あなたたちがいてくれてお父さんも幸せよ。イベントの日は病院があって見に行けないけど、楽しんできなさいね」
「うん、分かった!」

 満面の笑みでレイは返事をする。

「それから──イベントの帰りは、二人でゆっくりご飯でも食べてきなさい」
「えっ? 母さん、いいのか」

 突然の提案に、俺は目を見開いた。

「その日は夕方まで介護士さんがいてくれるから。夜は少しの時間あなたたちが家を空けても大丈夫よ。たまには二人で気分転換しなさいね」

 母の優しさに俺は胸があたたかくなり、そして心が踊った。
 何ヵ月振りだろう。レイと二人きりで食事に行けるなんて。
 内心歓喜する俺の隣で、レイは目をキラキラさせている。

「お言葉に甘えちゃうよ、お母さん」
「ええ、もちろんよ」
「じゃあさ、ヒルス。その日ケーキが美味しいお店へ行きたいな」
「何だ、またスウィーツ狙いか?」
「いいでしょう? 甘いもの食べたい! お母さんとお父さんのケーキも買ってくるね」

 満面の笑みで楽しそうに話すレイを見て、俺までも幸せな気分になる。
 だけど──
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