サルビアの育てかた
 ──なあ、レイ。君は俺のことをどう思っているのだろう。血の繋がりのある兄だと信じているのなら、俺の言動を見て聞いておかしいと思わないのかな。どうしてレイは、こんな俺の行動をいつも許してくれるのだろう。
 もしも君が真実を全て知ったとき、俺は君への想いを受け入れていいのだろうか。俺が自分の気持ちを知ったとき、君は俺の想いを受け止めてくれるだろうか。

 頭の中で色んな思考が巡る中、レイは俺の腕の中で静かに身体を預けてくれる。この優しいぬくもりをいつまでも手放したくなかった。

 だけど──ほんの僅かな時間だけ抱擁すると、俺は彼女のことを腕からゆっくりと解放した。

「明日は朝早いからな。もう寝よう」
「うん」
「おやすみ、レイ」
「おやすみ……ヒルス」

 お互いにしばらく何も言わずに見つめ合う。名残惜しさが二人の間を巡る中、レイは最後まで俺の顔を見ながら部屋へ戻っていく。
 先程まで色んな感情を絡み合わせていた俺の心の糸を、こうも簡単に溶かすことができるのは他の誰でもない、レイだけだ。

 それと同時に、更に彼女を守っていきたいという想いが強くなった。俺はもう、大丈夫。兄として、家族として。これからもレイを支えるために強く精神を保っていかなければいけない。

 腕の中に微かに残る彼女の香りに包まれながら、俺はその夜何とか眠りについた。
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