サルビアの育てかた
 こんな意味不明な質問に対して、フレア先生は疑問符を浮かべている。

「えっと……もしかしてずいぶん前の話をしているの?」
「あ、はい。兄が体調を崩したあの日、部屋の前で会いましたよね」
「あのことは気にしないで。ちょっと看病しようと思っただけだから」
「本当に、それだけですか?」

 バカだなぁ、私。やめておけばいいのに。
 フレア先生は戸惑ったような表情を浮かべながらも、ゆっくりと続きの言葉を紡いだ。

「正直に言うと──わたし、ヒルスのことが好きだったの。……ううん、違う。本当は今でも好き、なのよね」
 
 その一言に、私の心臓がドクンと鳴った。
 ──ほら、やっぱり。
 たちまち胸が、痛くなる。

「実は、ヒルスに告白したこともあるの」
「えっ、そうなんですかっ?」
「ええ。勢いで彼にキスしたこともあるわ。軽く、だけどね」
「そんな」

 ああ、まさか。全然、知らなかった。
 この気持ち、私は知ってる。フレア先生にヤキモチを妬いてしまっているんだ。
 必死に今の自分の心情を表に出さないように隠したけれど、顔が熱くなってしまう。
 抑えないと。私はあくまでヒルスの妹。兄に好意を寄せてくれる素敵な女性がいるんだから、むしろ喜ぶべきだよ。

 それなのに──今の私、きっと顔がひきつってる。
 七歳年上の義理の兄に恋なんてするものじゃない。いつかこういうことが起きるのは、分かっていたでしょう……?
 フレア先生は、スタイルがよくて気さくで優しくて素敵な人。ヒルスとお似合いだよ。
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