サルビアの育てかた
 ──すると突然、背後にあったドアが開かれる様子が鏡越しに映った。広げていたメイク道具を小さくまとめ、私は特に気にもせず化粧を続ける。
 けれどこのとき、思いも寄らない出来事が起きた。

「あら? あなた……レイよね?」

 鋭くてキツい声が、すぐ横から聞こえてきた。
 瞬間、私の息が止まりそうになるほど心臓が跳ねる。

 この、どこか冷たくて低い声は……。

「久しぶりねぇ。あたしもこれから出番なのよ。レイ、元気にしてた?」

 ドサッと隣のスペースに座る相手の顔が、鏡越しにはっきりと映りこんだ。印象的なライトブルーに染めたショートボブは、数年前と変わらず光っている。露出の多い服を着ていて、じっと私の方を眺めていた。

 思わず顔がひきつってしまう。それでも私は、なんとか明るい声を出す。

「久しぶりだね。……メイリー」
< 295 / 847 >

この作品をシェア

pagetop