サルビアの育てかた
 メイリーは無表情で化粧道具を鏡の前に並べると、慣れた手つきでメイクを始めた。

「ねえ、レイ。ダンス復帰したんだってね」
「うん、そうだよ」
「さっきヒルスと踊っていたの、見たわよ」

 私がぎこちなく頷くと、メイリーは手の動きを一度止めて深くため息を吐いた。
 ……嫌だな。絶対何か言われる。

「あなたさ、勘違いしてない?」
「えっ、何が?」
「ステージであんなダンスしてさぁ、ヒルスと恋人ごっこでもしているつもり?」
「……?」

 質問の意味が分からず、私は疑問符を浮かべた。
 メイリーは眉間に皺を寄せて更に続けるの。

「いいわねえ、レイは。コーチとしてヒルスが直々にダンスを教えてくれるんでしょう? 今日みたいなイベントにもジャスティン先生からのゲストとして参加してるって聞いたわよ」
「そう、だね。先生にもヒルスにも感謝してるよ」

 当たり障りのない返事をして、もうこの場から去ろうと化粧道具をポーチにしまい始める。居心地が悪すぎて、息が詰まりそう。

 だけど、メイリーの話は止まることを知らない。

「前に言ったわよね?」
「えっ」
「調子に乗らないでって。あなたみたいな人がジャスティン先生にそこまで期待される理由が分からないわ。それに、ヒルスとも仲良くしすぎるなと言ったはずよ。あなたはどうせニセモノの妹なんだから!」

 メイリーはどぎつい声でそんなことを言ってくる。
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