サルビアの育てかた
『痛い』
『熱い』
『お腹がすいた』
『怖い』
『悲しい』
『もうやめて』
『お願い』
『お願い』
『お願い……』

 ダメだった。私が泣けば泣くほど、悪魔は更に酷いことをする。
 ごめんなさい、私はあなたに甘えてはいけないんだね。ごめんなさい、ごめんなさい。

 心が恐怖に支配される。悪魔の鋭い目つきが怖い。何かを罵るような声に動悸がする。悪魔からは煙たい匂いが漂ってくる。それを嗅ぐと、吐きそうになる。
 逃げ出したくても、逃げ出られない。
 絶望だと思った、そのときだった。意識の奥底から、誰かの声が聞こえた気がした。

 ──やめろ。

 幻聴かもしれない。でもたしかにその声は、必死になって私を救おうとしているのが分かる。

 ──それ以上、彼女を傷つけるのはやめろ!

 助けを求めて、私は必死に叫び続けた。
 だけど私がもがくほど、悪魔の暴力はますます酷くなる。「何か」に対して抱いている強烈な憎悪を、まるで私にぶつけているようだ。

 永遠とも思われるような地獄の時間。そんな中かろうじて生きていられたのは、私を守ろうとするあの声のおかげだった。
 
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