サルビアの育てかた
 闇に支配された日々は、程なくして幕を閉じようとしていた。

 何日も経っていないと思う。
 いつも怖い顔だった悪魔が、今日はなぜか生気を失ったような表情をしている。小さな段ボール箱の中に荒々しく私を閉じ込めた。

 どうして私は今、裸なんだろう……?

 箱はがたがたと乱暴に揺れ始める。全身の痣に当たってとても痛い。身体中を針でぐさぐさと刺されるような、強烈な寒さ。
 どこへ連れていかれるの?

 ほどなくして、箱の中の揺れが収まった。
 誰かが雪道を歩く音が聞こえて。それは、だんだんと遠ざかっていき。
 やがて、何も聞こえなくなった。

 ああ……そっか。私、捨てられちゃったんだ。

 私のこと、いらなくなったんだよね。泣いてばかりの悪い子で、本当にごめんなさい。
 狭い箱の中で裸のまま独り取り残された私は、最後の力を振り絞って泣き声を上げる。

『助けて』

 手足が凍え、感覚すらもなくなってしまいそう。目の前は真っ暗で何も見えない。
 私の声は、次第に弱々しいものになっていった。それでも、最後まで諦めたくなくて。

『寒いの。怖いの。寂しいの。お願い。誰か。誰か、助けて!』

 どんなに叫んでも、誰からの返事もない。私を助けようとしていた、あの声さえも。この悲鳴は冷たい空気の中へと吸い込まれ、溶けて消えていくだけだ。
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