サルビアの育てかた

 先生は敢えて続きの言葉を避けるかのように、違う角度から褒めてくれるんだ。

「とにかく素晴らしかったよ。お父さんのことも大変なのによく頑張ったね」
「今日のイベントにレイと出られたのは先生のおかげです。色々とご配慮いただきありがとうございました」
「いいんだよ。スタジオの件なら調整してあげられるから。今はお父さんのことを優先してあげてね!」

 ジャスティン先生はこの上なく上機嫌に笑う。

 そんな先生を前にして、俺は心があたたかくなる。それと同時に、ある疑問が浮かび上がった。

「あの。先生、訊いてもいいですか?」
「うん? なんだい」
「先生は、どうして俺たちの状況をここまで理解してくれるのでしょうか?」

 素朴な疑問だった。俺が軽い気持ちで投げ掛けた、ちょっとした質問。
 そのはずが、その場の空気が一変してしまう事態になるんだ。先生の明るいオーラは瞬時に消え去り、神妙な面持ちへと変わる。
< 300 / 847 >

この作品をシェア

pagetop