サルビアの育てかた
 だけど店員さんは、こんな私にも愛想よく接してくれた。

「お客様。『シャルル』へは初めてお越しくださいましたか?」
「は、はい。そうです」

 ぎこちなく頷く私に対して、店員さんは優しく微笑みかけてくれる。

「どうか、あまり緊張なさらずに。わたくしたちは、お客様のご来店を心から歓迎しております」
「ありがとうございます……」
「当店は1990年に開業いたしました。お客様に楽しい時間と美味しいお食事をご提供いたします。お二人にとって忘れられないひとときが過ごせるよう、わたくしたちはお力添えしたいと考えております」

 それから店員さんは、おすすめの料理などを案内してくれた。
 若い女性に人気のメニューや、男性客に好まれるお酒なども教えてもらう。

「今日は車で来たので、酒は飲みません」

 ついさっきまで固くなっていたヒルスも、だいぶ肩の力が抜けてきたみたい。
 このお店には私みたいな子供は場違いだったかもしれない。そう思っていたけれど、丁寧な対応に気持ちが和らぎ心配もすぐになくなった。
 私はすっかり「シャルル」が大好きになった。

 オーダーをした後、ヒルスと談笑しながら楽しい時間が流れていく。 
 コース料理で出てきたメインのフィッシュパイを堪能し、私は心から幸せな気分になる。久々にヒルスと食事をしていることが嬉しくて、胸もお腹もいっぱいになった。
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