サルビアの育てかた
 ──だけど、こんな素敵な時間は一瞬のうちに過ぎ去ってしまう。ほんの数時間の幸せなひとときは、きっとしばらくやって来ない。

 食事を終えた後、私は「シャルル」のショートケーキが四人分入った白い箱を大切に抱えて車に乗り込む。

「店で食べなくてよかったのか? レイの一番の楽しみだろう」
「そうだよ。だから、家に持ち帰ってみんなでケーキを食べたいの」
 
 今朝の疲れきった母の顔を思い出す。少しでも元気を出してほしかった。家族で美味しいケーキを食べる、というちょっとした贅沢だけれど。
 私と同じ甘いものが大好きな母だからきっと喜んでくれる。
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