サルビアの育てかた
第四章
 夢を見ている。けれど、いつまで経っても私は幻の世界から抜け出せないの。
 あの夜起きたことは全てが幻想。そう思い込み続けてる。

 早く、目を覚まさないと。いつもの日常が私たちを待っているはずだから。
 父の奇想天外な言動を見て、ヒルスは苦笑いしてなだめようとする。その横で相変わらず母が疲れた顔をしながら、父の身の回りのお世話をする。私はそんな家族のために朝食を用意してあげるの。
 大変な每日。それでも私にとっては掛け替えのない大切な日々だった。
 だけど──いつまで経ってもその日常生活は戻ってこない。

 おかしいな。私、いつまで夢を見続けているんだろう……?

 幻の世界にいると、父と母の姿がどこにもないの。
 寂しくて悲しくて、胸が痛くて苦しくて。
 私は現実を受け入れられずに、両親の幻影を追い続けていた。
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