サルビアの育てかた
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私たちは、この苦しみによって残る互いの深い傷を癒そうとするかの如く常に寄り添うようになった。
このフラットの所有者であるジャスティン先生が言ってくれた。ヒルスの部屋のちょうど真上が空室になったから、自由に使ってもいいって。家具や家電が常備されている部屋だから、すぐに住める状態だった。だけど今の私には、独りで過ごす勇気がない。これ以上心が壊れないよう、ヒルスの部屋に籠って彼のそばで過ごしていた。
会話は殆どない。手のひらを重ねて肩を抱き寄せ、ぬくもりを分かち合った。
テレビをつけてもネットを開いても、私たちの家が火事になったニュースが流れてくる。私たちの住む町であのような大火事が起こるなんて過去に一度もなかったから、余計に大きく報じられてしまった。
あまり話したことのない近所の人や知らない人たちがインタビューを受けていて、
「家族みんな仲が良さそうでした。本当に可哀想です」
「よく息子さんと娘さんがガーデンでダンスをしていたのを見たことがあります。若いのにこれから大変ですよねぇ」
「お父さんが病気だったらしいですよ」
「本当にお子さんたちを思うと心が痛みます」
口々にそんな話をしていて、私はそれを聞く度に耳を塞ぎたくなってしまった。
他人から同情するような発言をされても何も嬉しくない。むしろ、嫌悪感のようなものが湧き上がってくる。
ダンススタジオやスクールにマスコミが来たみたいだけど、ジャスティン先生もショックのあまり取材を全て拒否したらしい。
私たちのことは、放っておいてほしい。関係ない人たちに話すことなんてない。
テレビの電源を切り、ネットさえ見なくなった。
頭も心も空っぽだ。