サルビアの育てかた
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悲しみに暮れている暇なんてない。
父と母の葬儀は粛々と行われる。俺は参列者たち一人ひとりに挨拶を交わした。声が出せないレイも、俺の隣で無言で会釈をする。
式が行われる教会内は神聖だ。
父と母の遺影の前には、白い菊花やカーネーションがたくさん添えられている。遺影に写る二人はそれを眺めながら、本当に幸せそうな顔で笑っているんだ。二人の光があまりにも眩しすぎて、俺はどうしても直視することができなかった。
参列者の中に、懐かしい顔があることに俺はふと気がついた。母の歳の離れた弟──つまり、俺の叔父が来ていたんだ。
「……ジェイク叔父さん?」
「よう、ヒルス。久しぶりだな」
「まさか、来てくれたなんて」
もう十年ぶりになるだろうか。最後に会ったのは、俺が十三歳くらいのときだ。ビジネスのためにアメリカで暮らしている叔父のジェイクとは、長い間会える機会がなかった。
俺は、幼い頃いつも優しく面倒を見てくれた叔父のことが大好きで、海外に行ってしまうと知ったときは大泣きした記憶さえある。
背が高く身体はがっしりしていて、ブロンドの髪をアップバングに整えている。四十代後半とは思えない若々しいその容姿は、十年前と変わらずダンディで品の良さが滲み出ている。そんな叔父のジェイクは、俺にとって男としても憧れの存在だった。
レイは叔父の顔をじっと見つめ、表情を少しだけ綻ばせた。
「レイも久しぶりだな。オレのこと、覚えているか?」
(もちろんだよ)
そう言うように、レイはうんうんと頷く。
「そうか、嬉しいな。最後に会ったときはまだまだ小さい女の子だったのに。こんなに大人びて、綺麗になったな」
あたたかみのある笑みを向けて、叔父はそっとレイの頭を撫でる。
頬をほんのり赤くする彼女は、喜んでいるようにも見えた。