サルビアの育てかた
 ──俺たちがそのようなやり取りをしている間にも、参列者は続々とやって来る。その殆どは父と母の職場の仲間や友人たちだったが、中には俺やレイの友人、スクール仲間、ジャスティン先生とフレア、スタジオ仲間たちまでも参列してくれた。あまり話す時間はなかったが、俺は感謝の気持ちでいっぱいになる。

 そして参列者の中に、もう一人。父と母が生前感謝してもしきれないほど世話になった人が来ていた。
 修道服を纏う彼女の姿を目にして、俺は目尻が熱くなる。その人は──
 
「シスター……」

 彼女の柔らかい笑みを見ると、沈んだ心が少しばかり軽くなる。
 レイがグリマルディ家の一員として暮らすことになる直前まで彼女を保護し、育ててきた優しいシスター。俺にとっても両親にとっても、そしてレイにとっても、深い縁のある人だ。

 柔らかい笑みを浮かべ、シスターはこちらに歩み寄って来る。久々に会うと何とも言えないあたたかいような、それでいて切ない気持ちになってしまった。
 俺たちの前に立ち、シスターは少しの間何も言わずにこちらを見つめてきた。レイに視線を向けると、とても心憂い雰囲気を醸し出す。

 ──遠い場所で長年彼女の幸せを願い続けてきた人が、レイと再会できた瞬間だった。だけど、喜びもなければ感動すらない。二人の間には、ただ悲哀が漂う。それにレイは、きっとシスターのことを覚えていない。

 黙って見つめてくるシスターを前に、レイは少し戸惑うように眉を八の字にする。

「お父様とお母様が安らかに眠られますよう、お祈りいたします」

 それだけを言葉に残し、シスターはその場から離れていった。
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