サルビアの育てかた
 ──待って、シスター。最後に言い残したことがある。
 俺は掠れる声を、必死に出した。

「シスター」
「はい」
「レイに会いたくないですか?」
「えっ?」
「いや、分かっています。今は会えないこと。でも、あと二年ほど待っていて下さい。レイに事実を伝えた後、必ず彼女を連れて会いにいきます」

 目を細め、シスターはこくりと頷く。

「……こんなときでさえも、あなたは優しさを見せてくれるのですね。わたしのことはどうか気にしないで。いつか彼女がわたしに会いたいと言ってくれたなら、いつでも来て下さい。あなたたち二人の気持ちを、優先して下さいね」

 シスターの目の奥が少しだけ潤んでいる。だけどそのことには気づかないふりをして、俺は大きく頷いた。
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