サルビアの育てかた
「まったく、ライクったら。また新人にちょっかい出して」

 話をしていると、いつの間にかメイリーとヒルスが私たちのすぐ横に並んでいた。
 ライクと呼ばれたその人は、上機嫌に笑うの。

「なんだよメイリー。おれは緊張しているレイを和ませようとしているだけだぜ!」
「そう言うけど、あんたいつも女子にウザ絡みするじゃない。ヒルスの妹なんだから、あんまり変なことしない方がいいわよ。ね、ヒルス?」

 話を振られ、ヒルスは私をちらりと見た。でもすぐに目を逸らした。そして面倒臭そうな顔をしてから、ため息を()くの。

「別に。俺には関係ない」

 ……あ。今のはちょっと寂しい。少しは気にかけてくれると思ったのに。

「兄貴はいつもクールぶってつまんねえ奴だよな。こんなに頑張ってるのにどうせ褒めてやらねぇんだろ? 次のイベントが成功したら、ご褒美におれがレイをノース・ヒルに連れていってやりたいくらいだぜ!」
「はぁ? こんなガキをデートにでも誘う気か」

 ヒルスは不機嫌そうに、語尾を強くした。それから不貞腐れたように口を閉じてしまう。

 以前に比べたら多少話せる仲になったけれど、まだまだヒルスとの距離は遠い気がした。私がもっと上手に踊れるようになれば……。そんな風に考えた。

 誰かに認めてほしいとか、大会に出たいだとか、ソロやセンターで踊りたいとか、特待クラスでの目標は色々ある。 
 でもね、私が踊る理由はそれだけじゃない。何よりもダンスをするのが純粋に楽しかった。
 クラスのメンバーには誰も彼もが輝くものがあり、その中で自分も踊らせてもらえるということがただただ嬉しかった。

 特待クラスのメンバーたちに刺激され、私は益々ダンスに夢中になっていった。
< 34 / 847 >

この作品をシェア

pagetop