サルビアの育てかた


 深夜になると、私は時折夢を見る。それは、酷く現実的で恐ろしいもの。
 いつ頃から見始めたのか、あまり覚えていない。だけど忘れた頃に、あの「悪魔」は私の前に現れる。

『やめて』
『痛い』
『熱い』
『ごめんなさい』
『許してください』
『もう泣かないから』
『お願い、お願い……』

 暗闇の中、私は何度も叫び声を上げる。
 目の前に、私を見下ろす「悪魔」がいた。ぼやけていてはっきりと姿は分からない。けれど、私のことを睨みつけているみたいだ。

 存在自体が恐くて怖くてたまらない。

 私がちょっとでも泣き声を上げると、ものすごい形相で叩いてくる。殴ってくる。身体中が痣だらけになっても、悪魔の気が済むまで地獄の時間が終わることはない。

『やめて……やめてってば!』

 どれだけ懇願しても、私の言葉は涙となって消えていく。

 悲しい。苦しい。寂しい。辛い。逃げたい。怖い恐いコワイ。

 悪魔は感情に任せて、いつも私に怒号を浴びせてくる。だけどその言葉の意味を、どうしても理解することができない。

 ……ううん、違う。理解したくなかっただけかもしれない。

 でもね、ひとつだけ分かることがあるの。
 この悪魔にとって、私はいらないモノなんだって。
 存在自体が邪魔なの。そんな私がいつまでも生き続けているから、悪魔の心の中はぐちゃぐちゃになってる。
 ごめん、ゴメンね。
 ウマレテキテ、ゴメンネ──
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