サルビアの育てかた
準備を整えると、私は早速フレア先生とアドリブで踊り始めた。
練習場には世界的アーティスト・モラレスの新曲が響き渡る。アップテンポで低音がガンガン利いたラップミュージック。歌詞は私にとって心に響くものだった。まるで闇に包まれた今の心情を慰めてくれるかのような素敵な歌だから。
【どんなに辛いことがあってもそれを乗り越えられたらあなたの力になる】
モラレスのハスキーな歌声によって奏でられる歌詞に、私は少しだけ勇気を貰えた気がした。
フレア先生は輝くような笑顔で私と向かい合って舞い踊る。彼女のダンスは繊細で魅惑的でセクシーで格好いい。初めて先生と二人きりで踊った。
胸がワクワクする。心から楽しいって、久しぶりに思った。沈んでいた気持ちが少しずつ地上に這い上がっていく。フレア先生とのダンスで、私はたしかにそう感じられた。
ノンストップで踊り続けた後、フレア先生は今までにないくらいハイテンションで、
「レイ。やっぱりあなたのダンスは最高よ!」
叫ぶように称賛してくれた。
「この曲、最高でしょ。今のあなたたちを応援しているような言葉がたくさん綴られているから、聴いてほしかったのよ」
胸が熱くなる。踊ったばかりで暑いのに、更に体温が上がってしまいそう。フレア先生に「ありがとう」と直接言葉にして伝えたかった。でも……やっぱり声が出せない。一言も発せられない。もどかしくて仕方がなかった。