サルビアの育てかた
 私たちが水分補給しながら小休憩をしていると、練習場へジャスティン先生がやって来た。

「ハイ、フレア、今日は早いね。それに……レイじゃないか! 来てくれたのか!」
「わたしが誘ったんです。気分転換に一緒に踊ろうと」
「そうだったのかい」

 ジャスティン先生は嬉しそうに私たちの前に腰かける。
 いつもと変わらない態度で接してくれて、嬉しかった。変に気を遣われても困ってしまうから……。これはジャスティン先生の優しさなんだと、私は受け止める。
 
「レイと踊れてよかったわ。ちょっとでも元気出た?」

 フレア先生の問いに、私は大きく頷く。ちょっとどころか、だいぶ心がスッキリしたもの。心の傷が完全に癒えたわけじゃないけど、こんなにも楽しいひとときを過ごすことができた。心の底からフレア先生に感謝してる。

「ヒルスも一緒に来られたらよかったんだけどね。彼は元気にしているのかしら? フラット内でも全然見かけないし、まさかずっと引き籠もったまま?」

 眉を下げながらフレア先生はそう訊いてくる。

 たちまち彼の顔を思い出した。日々弱っていく姿を見ると、私の心はえぐられる。
 正直に頷くしかできなかった。

「さすがに心配だね。先日のご両親の葬儀でも、見たこともないくらいげっそりしていたじゃないか」

 ジャスティン先生は顎に手を当て、ううんと小さく唸った。
 フレア先生も隣でため息を吐くの。
 先生たちの様子を見て、私はいたたまれない気持ちになってしまう。
< 342 / 847 >

この作品をシェア

pagetop