サルビアの育てかた


 先生たちと話を終え、私は帰路についた。

 たくさん踊ったおかげかな。今は町の風景がとても明るく見えるようになった。
 ハイ・ストリートを歩いていると、お昼時なのでたくさんの人たちが町に溢れていた。カフェのテラスでホットティーを飲む人たちや、ベンチに座ってサンドウィッチを食べる人などの姿があちこちで見られる。
 私も帰ってご飯を食べよう。

 軽やかにフラットまで行き着くと、私は自室には戻らずヒルスの様子を見に行くことにした。心配なのもあるし、まだ一人でいたくない。

 彼の部屋の前に到着し、軽くノックをした。
 だけど──応答はない。何度かドアを叩いたものの、反応が全くない。

(まだ寝てるのかな……?)

 そっと、ドアを開けてみた。その瞬間、空気の籠もった匂いが私の嗅覚を刺激した。
 中へ入り、部屋の様子を確認すると、テーブルに今朝私が用意したプレートがそのままの形で置かれているのが目に入る。トーストもビーンズもベーコンも……何も減っていない。
 ベッドに目を向けると、未だにヒルスが横になって寝息を立てているのが目に映った。
 もう、午後の一時だよ。まだ起きないのかな……。
 髪は乱れ、目元にはクマができていて白い肌は荒れている。服も数日に一度しか変えてなくてしわくちゃ。
 いつも格好よくて清潔な彼は、どこへいってしまったの? まるで廃人のように生気がなくて、見ているだけで辛い。
 このままじゃダメだ。私も少しずつ立ち直って、悲しみの沼から彼を助けてあげなきゃ。

(ねえ、ヒルス。私、頑張るからね。きっとあなたに『光』を見せてあげる)

 ヒルスが眠るすぐ横にしゃがみこみ、私は心の中で語りかけた。
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