サルビアの育てかた
「今のお前じゃ、無理だな」
「何が?」
「レイを支えられない」

 その言葉に俺は目を見開き、ソファから飛び起きる。

「どういう意味だよ、叔父さん」
「偉そうに『俺は大丈夫』『レイを支えたい』なんて言っているくせに、誰がどう見ても今のお前は誰の支えにもなれない」
「それは」
「レイを見てみろ。今日もスタジオに行ってダンス練習をしているらしいぞ。お前は仕事もずっと休み続けているよな」
「仕事は……長期休みをもらっている」
「それなら、いつまで休むんだ」
「……」

 何も答えられない。正直いつ復帰できるかも見当がつかないからだ。
 有給などとっくに使い切り、今は欠勤扱いになっている。だけどジャスティン先生はいつもどおり優しくしてくれて「元気になるまでずっと待っているよ」なんて言ってくれて。正直俺はそれに甘えていていつまでも仕事に戻れずにいる。

 俺を眺めながら叔父は深く息を吐いた。

「お前がいつまでもそんな状態でいるから、レイは失声症が治らないんだと思うぞ」
「俺のせいじゃないだろ。レイが声を出せないのは、父さんと母さんのことがあったからだ……」
「きっかけはそうだ。だが今は、こんなだらしないお前を見てレイはショックを受けているんだ」

 叔父の言葉に、俺はたまらず首を横に振る。彼女の全てを知ったようなその口ぶりが何となく嫌で、胸の中がざわつき始めた。
 それでも叔父は、容赦なくとんでもない発言を投げつけてくる。

「いつまでもお前がそのままなら、レイはオレが預かる」
「……は? なんだって?」
「いつまでもお前がそのままでいるなら、彼女はオレが引き取ると言っているんだ」
「いや待てよ。どうしてそうなる?」

 信じられない話に、俺の心臓は張り裂けそうになった。
 レイが俺のそばから離れて暮らすなんて、ありえないだろう!
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