サルビアの育てかた
 石造の外壁は少し黒焦げた程度で再利用できる状態だった。建物内をリノベーションすれば住めると叔父に説明されたけれど……あんなことがあった場所でもう一度家を建てるなんて、到底考えられなかった。
 ヒルスはとくに反対していて、たくさん話し合いをした。私たちの意志が固まったあと、全部を解体してもらったの。
 後悔はしていないよ。初めて更地になった跡地を実際に見て、あっという間に実感が湧いて、苦しくなった。それだけのこと……。

 目線を下に落とし、私は力無くヒルスの隣に立つ。冷たい心をどうにかしたくて彼の手を握り締めた。
 でも──
 手と手が触れ合うだけで、いつもなら伝わってくるあの優しさがこのときばかりは感じられなかった。愛しさも、安らぎさも、あたたかみも。今は何もかもが消えている。
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