サルビアの育てかた
 乱雑に生い茂る草の奥の方をグッと覗き込み、ヒルスはそこで目を見開いた。ようやく、緑の中にある大切なものの存在に気づけたみたい。

「これは……」

 私もヒルスと並んで、大切なものに目線を向ける。

 本当に、信じられなかった。けれど──たしかに生き残っている。
 たったひとつ浮いた存在でありながらも、キラキラと光る赤色の『サルビア』が、まるで何事もなかったかのようにそこに立ち尽くしていた。
 元気に咲く『サルビア』をじっと見つめながら、ヒルスは声を震わせる。

「どうして。母さんの『サルビア』が……?」

 あの大火事の中この一輪だけは燃やされず、綺麗なままの状態で残されているなんて。

 力強く佇む『サルビア』は、太陽の光をたっぷり浴びて輝いている。今まで見たどんな花よりも美しい。見れば見るほど、私の心は癒されていった。
 驚きを隠せない様子の彼の瞳をじっと見つめ、私は微笑みかけた。

(お母さんが残していってくれたんだね)

 声を届けたい。心の中でもう一度語りかけた。
 ハッとしたように、ヒルスは見つめ返してくる。

(きっとお母さんが、この『サルビア』を通じて私たちに伝えているんだよ。「前を向いて生きてほしい」って……)

 何も答えなかったけれど、ヒルスはぎこちなく頷いた。
 声が、届いてる。ちゃんと私の言いたいこと、彼に伝わってる……。
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