サルビアの育てかた


 夕方。
 ダンススタジオを後にし、疲れた身体でフラットへ帰る。すでにレイが食事を用意して俺の部屋で待っていた。

「ただいま、レイ」

 愛らしい笑みを向けて、レイは玄関まで出迎えてくれた。彼女の顔を見るだけで心が癒やされる。
 久しぶりのこの感覚がたまらない。

「叔父さんは? 今日も仕事でホテルに戻ったのか」

(そうだよ、今日はヒルスと二人だね)と、レイは頷く。手を引いて部屋の奥へと俺を導くんだ。
 嬉しそうに彼女が食卓に向かって指を差す。そこには──熱々のハンバーグステーキとスープ、コロネーションチキンやチーズリゾット、デザートにチョコレートなどがテーブルにズラリと並べられていた。

「ずいぶんと豪勢だな。どうしたんだ?」

 ニコニコしながらレイは(よく聞いてくれました)と言うように俺の目を見つめてくる。

(今日はヒルスがスタジオ復帰した記念日、でしょう?)

 ああ、そうか。これは彼女なりに俺を労ってくれているんだ。レイの表情を見て瞬時に理解した。
 嬉しそうな彼女とは裏腹に、俺は素直に喜べずにいる。今日のスタジオで相当悔しい思いをしてしまったからだ。
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