サルビアの育てかた
 こうして彼女と一緒にご飯を食べられるのは、あと何回だろう。
 レイが叔父のジェイクとアメリカへ行ってしまうことをふと思い出す。俺はこの話題に触れるのが怖くて直接彼女から聞き出せずにいた。
 だけどレイ自身が決めたなら、止めることなど絶対にしてはいけない。

「ごめんな、レイ」
(えっ、何が?)
「俺はもう、レイにダンスを教えられないかもしれないな……」

 今の調子では、レイが叔父とアメリカへ飛び立ってしまうまでに俺がレッスン指導に戻るのは難しいかもしれない。最後に彼女のそばでダンスを教えたかったが、今の状況では間に合う自信がなかった。

(何言ってるの、大丈夫だよ。私、ずっと待ってるから。ヒルスがちゃんと調子を戻したら、新しい技も教えてもらうからね)
「そのときは叔父さん得意のテレワークでもするか」

 レイはスプーンを手に持ったまま、固まってしまう。疑問符を頭の上に浮かべているようだった。

「俺たちの心はいつも近くにあるからな」

 寂しさを隠しながら俺はレイに笑みを向けた。
 これからどういう道を歩んでいくのかは、彼女自身が決めること。俺は家族として、レイの幸せを願いたい。
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