サルビアの育てかた
 ──この前、俺は実家の跡地で酷いことを言ってしまった。それなのにあれ以来一切その話題に触れてこない。いつも優しい叔父を怒らせてしまうほど、俺は荒れていたのに。
 鼻歌を口ずさみながら運転する叔父を横目に、急に申し訳ない気持ちになった。

「なあジェイク叔父さん」
「ん?」
「色々、悪かったよ」

 目の前の信号が赤になり車を停めると、叔父は不思議そうな顔でこちらを見た。

「色々と手伝ってもらっているのに、俺は殆ど何もしていない。実家の跡地ではあんな酷いことを言って叔父さんを怒らせた。最低な甥でごめんな」
「ああ? 別に気にしてないけど」

 信号が青になると、再び車はゆっくりと走り始める。叔父の運転は、いつも心地よくて安心するんだ。

「オレも大人げなかったな。もう少しお前の気持ちも察してやるべきだった」

 その柔らかい口調は、幼い頃叔父に甘えたときと同じもので、懐かしい気持ちにさせてくれた。

「姉さんが生きていた頃、時々連絡を取り合っていたんだけどな。よくお前とレイの話をしていたよ。ダンス大会でヒルスが何位になったとか、今日のイベントでレイが本当にいい踊りをした、とか。家族で旅行に行った自慢話もされたな」
「そうなのか……」

 母が嬉しそうに話す姿が容易に想像でき、俺は自然と笑みが溢れる。

「でも姉さんが一番嬉しそうに話してくれたのは、お前とレイが仲良くガーデンでダンスをしていたことなんだよ」
「えっ」
「ヒルスは最初、レイとあまり仲が良くなかったよな? それが、レイがダンスを始めてから少しずつ打ち解けて、いつしか二人でダンス練習をしているのが当たり前になって。その話をすると、姉さんはいつも嬉しそうな声をしていたんだ」

 頭の中で、過去の映像が瞬時に蘇った。
 たくさんの花たちが咲き誇るあのガーデンで、レイと俺はいつも汗を流しながら息が切れるまで踊り続けた。母は窓の向こうで目を細めながら、その様子を見守っていたな。
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