サルビアの育てかた
「どうして」

 今日は友人との約束があると言っていたはずなのに。
 音楽が流れると、レイは堂々とした様でステップを刻み始める。
 曲は世界的アーティスト、モラレスが歌う『SHINING』だった。レイが初めて個人大会に出場した日と同じ楽曲だ。

【雨が降っても、風が吹いても、涙を流したあとは前を向こう。晴れの日は必ずやってくるから】

 モラレスの凛々しい歌声で、そのような前向きな詩が歌われる。レイにとっても、俺にとっても心に染みる歌だ。

 アップテンポなリズムで、彼女の魅惑的なパフォーマンスは繰り広げられていく。腰回りのセクシーな動きと、機敏に、かつしなやかに舞う手足のダイナミックさは、大人の女性らしさも引き出されていた。十歳のレイが踊ったときとはまた違う魅力で溢れる。

 俺は感極まり、熱いものが目から溢れ出しそうになってしまう。

(レイ……いつの間に。こんな大きなステージに立てるなんて凄いじゃないか)

 毎日早朝から練習に出ていたのは、まさかこのためだったのか。

 以前よりももっと──彼女のダンスが輝いて見える。レイが技を決めるごとに、歓声によって会場中が湧いていた。

 本当に、綺麗だ。俺は彼女の舞にますます心を奪われていたんだ。
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