サルビアの育てかた
「叔父さん……ありがとな。ここに連れてきてくれて」
「礼を言う相手はオレじゃないだろ」
「もちろん、レイたちにもしっかり話しておくよ。こんなに落ち込みまくっていた俺を救ってくれるためにみんなは……」
「そうだよ。お前がネガティブのままだと、これからもレイのそばで支えていくのは大変だろうしな」
「……え?」

 ジェイクの言葉に、ヒルスは目を見開いた。

「何言ってるんだよ。レイは叔父さんと一緒にアメリカへ行くんじゃないのか」
「ああ、その話か。まあ、結局彼女には何も話していない」
「なんだって?」
「レイにはお前が必要だ。だからオレは余計な話をしなかった。それだけの話さ」

 平然と答えるジェイクだが、内心一抹の寂しさを抱いていた。

「ヒルス」
「ん?」
「お前、もしオレが本当にレイを引き取ることになっても、止めるつもりはなかったのか」
「えっ」
「お前にとって、レイはかけがえのない存在だろ? 彼女まで失ったら、今度こそ生きていけないんじゃないか」

 鼻で笑いながらジェイクはそう言い放つ。
 ヒルスは俯き、小さく唸った。

「生きていけないっていうのは大袈裟だよ。でも、ありえないくらい不安だった。今までずっと一緒に過ごしてきたからな。レイが遠い国に行って離れるなんて、想像しただけで怖くなった」
「レイがいなくなると困るくせに、簡単に手放そうとするな」

 ジェイクは真顔になる。

「もう二度とレイに心配かけさせるなよ」
「もちろん、分かってる」
「好きなんだろ?」

 はっきりとした口調で、ジェイクは疑問をぶつけた。
 頬を真っ赤に染め、ヒルスは言葉を詰まらせるのだ。

 ──本当にこいつは、分かりやすい。表情だけで心情が見て取れる。こういうところは、圧倒的に母親譲りだ。
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