サルビアの育てかた


 大会後の熱が冷めないうちに、俺とレイは二人きりで帰路についた。車内にはついさっきレイが踊ったモラレスの曲が流れている。
 それにしても、みんな分かりやすいよな……。
 車を運転しながら、先程のやり取りを思い出した。

 ──彼女が表彰された後、俺は叔父と一緒にレイの控室へ立ち寄ったんだ。
 そこにはジャスティン先生とフレアもいて、二人は今までにないほどテンションを爆発させていた。

「本当にレイは最高よ! こんなに大きな大会でナンバーワンになるなんて!」
「今まで頑張った甲斐があったね。おめでとう!」

 先生もフレアもレイに抱きついたり頭を撫で回したり、とにかく興奮が収まらない様子だった。
 そんな二人の称賛に戸惑ったような顔をしながらも、彼女は嫌がる素振りを一切見せない。

「先生たちが毎日熱い指導をしてくれたおかげでもあるんじゃないですか」

 叔父が嬉しそうに二人に声をかけると──なぜかその後三人は意気投合してしまい、話し込んでいた。
 挙句の果てに叔父は、

「オレは先生たちとこの後飲みに行くから、お前とレイは先に帰れよ」

 そんなことを言い始める。

「俺たちだけ仲間外れにするつもりか」

 不貞腐れて俺がそう言うと、叔父の横でフレアがさり気なくウインクをしてくる。

「そうじゃないわよ。今日あなたはレイと二人で家に帰るのよ」
「……はあ?」
「今日はよく頑張ってくれたからね! 早めに帰って休ませてあげるべきさ。よろしく頼むよ、ヒルス。また今度みんなでパーティーをしようじゃないか!」

 前歯を光らせながら、ジャスティン先生までそんなことを口にする。
 その時点で察した。みんなは俺とレイを二人きりにさせようと要らぬ気を遣っているんだ。
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