サルビアの育てかた
 ──そのことを思い出し、俺は大きく息を吐いた。

「まったく、家に帰ればいくらでも二人の時間はあるんだぞ……」

 心の中は少しばかりどんよりしていたが、夜の明かりに照らされる都会街の美しい風景が癒やしをくれる。

(ヒルス、どうかした?)

 レイが首を傾げているのが横目に映った。
 自分が大きな一人言を漏らしていることに気づき、ハッとする。

「いや……。俺たちだけ先に帰らせて、ジェイク叔父さんたちは飲みに行くなんてズルいよなって」

 その言葉に、レイはくすりと笑った。

 赤信号で車を停めた折、俺はふとレイの顔を見た。すると彼女も、当たり前のように優しい眼差しで見つめ返してくれる。
 街の明かりに照らされる彼女の綺麗な瞳に、吸い込まれてしまいそうになった。

「……っ」

 俺が見惚れていると、レイは小さく何か言葉を発しようとしていた。彼女の目線は俺の後方に向けられていて、嬉しそうに遠くを眺めている。
 振り返ってみると──道路の反対側には大きな観覧車が佇んでいた。テムズ川に面し、ブライトブルーに輝く巨大観覧車は存在感が物凄い。
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