サルビアの育てかた
 ──ハッとした。一瞬、幻聴だと勘違いしそうになる。
 でも、違う。今のは心の中から伝わってくる言葉じゃない。その声は、たしかにレイの口から発せられたものだった。

「まさか……レイ。今、喋ったのかっ? 喋れるようになったのか!」
「うん。そうみたい、だね?」

 ゆっくりと、丁寧に。一文字一文字たしかめるように、彼女は言葉を紡いでいく。声を出せた本人が一番驚いているようで、レイは唇に手のひらを当てた。

「久しぶりに聞いたな、レイの声」
「本当、だね」
「凄く綺麗だよ」

 何の考えもなしに、俺は自分の正直な気持ちを口にしてしまう。

 しまった。こんな台詞、兄が言うべきではない。レイがどんな気持ちになるのかよく考えなければならないのに。
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