サルビアの育てかた
 俺は手をさっと放し、彼女から目を逸らした。
「ごめん」
「どうして謝るの?」
「どうしてって。俺にこんなこと言われたら、驚くだろ?」

 俺の顔は今、きっと真っ赤になっている。

 自分でも言動が矛盾していると思った。こんなにもムードが良い場所で手を繋ぎながら二人で歩いていたというのに。今更「可愛い」と一言伝えただけで、何をこんなに慌てているんだろう。

 自分のダサさに呆れていると、レイは俺の前に立って優しい笑みを浮かべた。

「ヒルスだから、私は嬉しいよ」

 彼女の言葉に、俺の胸は更に早鐘を打った。
 なんだ、おかしい。変だぞ。いつも冗談を言うときのレイの態度と全く違うじゃないか。

「嬉しい、だって……?」
「好きな人に綺麗って言われたら、普通なら喜ぶでしょう?」
「えっ」

 俺の頭の中は混乱して止まらなくなる。

 いや待て。これはどういうことだ。どうしてレイは、冗談抜きの真っ直ぐ真剣な目をしているんだ。
 さりげなく出た「好き」の意味は、妹として、ということだよな? 違うのか? 他に意味はないはずだ。だけど俺のことをからってくるいつものレイは、どこへ行った?
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