サルビアの育てかた
◆
帰宅後。
俺たちはこの日、相変わらず寄り添い合いながら床に就いた。
しかし、目が冴えてしまってどうにも寝つけない。レイのダンスを見て心身ともに復活した俺は、気持ちが妙に興奮してしまっている。
彼女のぬくもりが伝わってきて、少しでも肌に触れると俺の中に強い刺激が走ってとんでもない。気持ちが沈んでいるときは何も感じなかったはずなのに。
今はレイの寝顔を見るだけで、愛おしさが溢れる。吸い込まれるように、目が離せなくなってしまうんだ。
そっと彼女の頬に触れ、俺は静かに囁いた。
「レイ、起きてるか」
「……」
小さく寝息を立てるだけで彼女は返事をしない。
俺が言える口ではないが、この歳になって毎晩のように添い寝をする兄妹なんて普通じゃない。
あの日の件があってしばらくの間、俺もレイも精神的に独りで過ごすことができなくなってしまった。だからずっと寄り添いながら昼夜を共にしていたんだ。
だけどもう立ち直った。お互い別々の部屋で過ごしても大丈夫なはずだ。
今までずっと一緒に過ごしてきたからだろうか、今夜もレイは俺の部屋で過ごし、同じベッドで一緒に寝る流れになってしまった。
俺もひとこと言えばよかったはずだ。「自分の部屋で寝ないのか」と。でも──もしも俺がそのようなことを口にして、レイが一緒に寝てくれなくなってしまったら? そんな考えが頭を巡ってしまい、何も訊けなかった。
結局俺は、彼女と添い寝がしたいだけのシスコン野郎だ。義理だとしても兄という自覚は持たなければならないのに、意志が弱すぎる。
あれこれ俺が一人で悩んでいる中、レイは無防備に隣で眠り続けている。彼女は一体、何を考えているのだろう。
以前にフレアが言っていたが、レイは心の奥底で彼女自身も気づかないうちに、俺を血の繋がらない兄なんだと勘づいているのではないだろうか。もしそうだとしたら、いつも俺の愛情を受け取ってくれるのは、レイも俺のことを特別な存在だと思っているのではないだろうか。
自分でも驚くほど、自意識過剰になっている。でもそれにはちゃんとした理由があるんだ。こんなに可憐な顔をして、すやすやと眠る彼女がすぐ目の前にいるのだから。