サルビアの育てかた
 もう、限界だ……。諦めかけていたとき、誰かがゆっくりとこちらに歩いてくる音が聞こえてきたの。

 私のことを閉じ込めていた箱がパッと開き、女の人と目が合った。
 修道服をまとった、全然知らない人。彼女はこちらをじっと見つめ、とても驚いた顔になった。そっと私を抱き上げると、冷たい雫を頬にたくさん流していた。
 誰だろう? ううん。誰だっていい。
 不思議だね。誰かに抱っこしてもらうのって、こんなにあたたかくて安心するものなんだ。
 生まれて初めて人に抱かれた心地よさに、とても穏やかな気持ちになる。もう、泣く必要なんてない。
 私に安心を与えてくれる人と、守ろうとする誰かがいるなら、頑張って生きていきたい。強くそう思った。
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