サルビアの育てかた
「ヒルス、いいよ」
「え?」
「ハグして」
「……いいのか?」
「うん……!」

 私の答えを聞いて、ヒルスは目を細めた。
 それからそっと私の背中に両手を回すと、全身を優しく抱き寄せてくれる。
 彼の男らしい香りと、熱いぬくもりが私の心を刺激する。胸の鼓動が一気に忙しくなった。
 お互いに口を閉ざし、部屋の中はたちまち静かな空間と化する。

 ──ねえ、ヒルス。私たち、兄妹だよね? これにはどういう意味があるの……? こんなことをされたら、もっとあなたのことが好きになっちゃうよ。

 ほんの少しの間だった。ぬくもりを分かち合うと、ヒルスは私からそっと両手を放した。

「行ってくるよ、レイ」
「うん……行ってらっしゃい、ヒルス」

 訊きたくなってしまう。あなたの想いを。私はヒルスの妹なのに……妹であると心に決めたはずなのに。そうじゃなくて、もしも許されるのならばそれ以外の関係になりたいと思ってしまう。
 こんな想いを隠して、私は笑顔でヒルスを見送った。

 彼が部屋から出た後も、私の身体に彼の優しさが残っている気がした──
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