サルビアの育てかた
「──ふーん。レイのダンス、なかなかの迫力ね」
俺が夢中になってステージを眺めていると、突然メイリーが隣にやって来た。
「そうだな。練習以上のパフォーマンスだ」
「ヒルス、ずっと練習に付き合ってたわよね」
「まあ、妹だからな」
「妹、ねえ……」
なぜだかメイリーは、一瞬だけ面白くなさそうな声になった。急に俺の前に立つと、ぐっと顔を近づけてくるんだ。
「この後あたしも本番なの。応援してくれる?」
「ああ、そうだったな。頑張れよ」
「今回も入賞できる思う?」
「メイリーはいつもいい踊りをするし大丈夫だろ」
「もしも三位以内に入賞できたら……ご飯に連れていってくれない?」
「えっ。俺が?」
「いいでしょう?」
メイリーは絶えず俺の目をじっと見てくる。カラーコンタクトで今日は赤い瞳の色をしていて、濃いめの化粧のせいもあってか目力がものすごい。長く視線を合わせていると、圧にやられそうだ。
飯に連れていく。ということは奢らないといけないのか……?
俺の懐は寂しい。ご馳走してやる金もそんなにない。どうにか断る口実を考える。
「飯なら……そうだ、あいつに。ライクに連れていってもらえよ」
「ええ? どうしてライク⁉」
「あいつなら洒落たレストランを知ってるらしいぞ。俺なんかその辺のパブしか連れていってやれないしな……」
「パブでもバーガーショップでもなんでもいいわ! あたしはヒルスとご飯を食べに行きたいの」
「勘弁してくれ。そもそも俺にはガールフレンドがいるんだ」
「全然会ってないのよね? ご飯くらい平気よ。打ち上げみたいなものだし!」
全く引く様子も見せないメイリーに、俺は困り果てる。