サルビアの育てかた
「なあ、レイ。昨日の帰り……どうしたんだっけ」

 そう問われると、レイは一度料理をする手を止める。

「あの後、ヒルスが寝ちゃったからタクシーで帰ったんだよ。ジャスティン先生とジェイク叔父さんに手伝ってもらったの」

 無表情で話すレイを前に、俺は心の中で叫んだ。「やってしまった」と。

「そうか、ごめん。俺、あんまり酒強くなくて……」
「それは仕方ないよ。そんなの私じゃなくて先生と叔父さんに謝るだけでいいし」
「えっ」
「それよりさ、ヒルスは……他に、言うことはない?」

 野菜スープの入った鍋をかき混ぜながら、レイは怒っているような、いや、不機嫌そうな表情でいるんだ。

(何だ? 他に何か悪いことしたかな)

 未だに働こうとしない頭を必死に叩き起こし、記憶を掘り起こすが──思い当たる節がない。

 何も答えられないでいると、レイはコンロの火を止めて小さくため息を吐く。

「……覚えてないんだね。それならもういいよ」

 レイは、俺に背を向けて洗い物をさっさと済ませていた。
 未だに寝ぼける頭のままで考えたところで、本当に思い出せない。
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