サルビアの育てかた
 昨夜、なかなかトイレから戻ってこなかった俺とレイを心配したフレアが、様子を見に来てくれたそうだ。
 するとそこでは、俺がレイを抱き締めて離さない状況が繰り広げられていたという。

(……そうだ。あの時、なぜかレイのことがいつも以上に可愛く見えたんだよな)

 俺は何を思ったのか、小さく抵抗するレイに対して「可愛い」「大好き」「キスしよう」などと兄が到底言わないような台詞を吐いていたという。

 ──待てよ。それは完全に兄としてアウトだろ。

 俺は恥ずかしのあまり顔面がカッと熱くなる。
 どこまで俺は馬鹿野郎なんだ。あれほどレイを傷つけないようにと自分の中で誓ったはずなのに。

「レイは、どんな様子だった」
「凄く困ったような顔をしていたわ」
「俺、他に何かやらかしていたか……?」
「それは」

 心拍数が上がっていく。声を震わせながらも、フレアに問いかけた。

「もしかして、キスなんて、してないよな?」
「……」

 フレアは考え込むようにして口を閉じ、遠くを見やる。
 なんだ、そのリアクションは。やめてくれよ。はっきりと「してない」と言ってくれ。
 俺が冷や汗を流しながら返答を待っていると、眉を八の字にしながらフレアは小さく首を横に振る。

「……分からないわ」
「えっ」
「わたしもあの状況にビックリしちゃって。目を覆っちゃったの。はっきり見ていなくて」
「そ、そうか」
「でもただ事じゃないと思ったから、すぐあなたを止めに入ったわよ。まあその後、ヒルスは倒れ込んで意識はどこかぶっ飛んじゃっていたけどね」
「……」

 俺は決して酒癖が悪いわけではない。むしろ普段全く飲まないしそれほど好きでもない。

 昨夜はレイがそばにいたから、胸がドキドキして酔いが早くなってしまったこかもしれない。
 ……いや。レイのせいにするの違うな。
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