サルビアの育てかた



「──それで、オレは強制的にお前から呼び出されたということか」

 帰宅後、俺は一人でいるのが落ち着かず、叔父のジェイクを呼び出した。ソファに座りながら叔父は大きな欠伸をする。

「ごめん叔父さん。けど、助けてほしいんだ」
「そう言われてもな。お前の気持ちの問題だろ」
「そうなんだけど」
「それにオレももうすぐアメリカに帰るしな」
「分かってる……。でもどうすればいいか一緒に考えてくれよ」

 俺が懇願する中、叔父は腕を組んで小さく唸る。

「仕方ない奴だなぁ。それにしても、お前がレイのことをそこまで大事にしているなんてな。普通の野郎ならとっくに手出してるぞ」
「な、何言うんだよ」

 叔父の言葉に冷や汗を流す。完全に手を出したわけではないが、夜な夜なレイにキスをしてしまった事実があるわけで……。
 その事を隠している自分は、心底最低な奴だと思う。

「まあ、それは冗談として。姉さんたちの想いもあるし、どうしてもレイに事実を話すのは二年先にするんだろ?」
「当たり前だよ」
「お前のそういうちゃんとした考えがあるのは偉いと思うがな。ただ、その件でお前が悩んでいたら、姉さんたちも天国で心苦しい思いをしているかもな」
「どうして?」
「お前たちが義理でも兄妹という関係じゃなければ、とっくの昔に二人は結ばれていて、はいおめでとう、ハッピーエンドで完結してると思うぞ」
「はあ?」
「だがまあ……普通の関係じゃないし、簡単な問題でもないから仕方ないか。とりあえずアメリカに帰るまでは、出来るだけお前の部屋にいてやる。お前が変な気を起こさないようにな」
「ありがとう、叔父さん。助かるよ。少し狭いけど、ごめんな」
「ま、可愛い甥っ子と姪っ子の為だ。お前たちを応援すると決めたんだから、出来ることがあれば面倒でも付き合ってやるさ」

 少し乱暴な言い方ではあるが、叔父の口調だけはとても柔らかい。そんな優しさに、俺は笑みをこぼす。

「明日は三人で姉さんたちの墓参りに行くからな。それまでに仲直りしておけよ」
「ああ、分かったよ」
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