サルビアの育てかた
 ──分かったよ、なんて意気込んで言ってみたのはいいものの。レイが夕方過ぎに帰ってきた後も、相変わらず妙な気まずさがあり、まともに俺とレイは会話すら交わせなかった。

「ジェイク叔父さん、今日はヒルスの部屋に泊まるんだね」
「まあな。もうすぐ向こうに帰るから、思い出づくりとしてしばらく夜は邪魔させてもらう」
「ふーん?」

 少し無理がある叔父の言い様に、レイは首を傾げた。彼女はあれこれ余計なことを問いだしたりしない性格なので、それはそれで助かったが。

 レイはその日、叔父とは普通に接しているのに俺とは目もあまり合わせてくれなかった。そんな彼女の態度に、俺の中にはどうしようもない寂しさが溢れていた。

(レイが幼い頃、俺もこんな感じで無視していたな……。あの時のレイも、こんな想いをしていたのかな)

 今になって自分の過去の態度を思い出す。どれだけ申し訳ないことをしていたんだろうという後悔が、俺の心を蝕んでいった。

 今までの俺は調子に乗りすぎていたのかもしれない。レイと手を繋いだり、抱き締め合ったり、添い寝をしたりしていた。
 しかし、それ以上のことをしようとすればどうやら彼女に嫌われてしまうらしい。
 兄妹でそのような絡み合いをすること自体おかしな話だが、兄としての自覚がなさすぎる俺は、自分の愛情をレイが全て受け止めてくれるんだと心のどこかで勘違いしていた。
 彼女に嫌われたくない。つい最近まで笑顔で俺に向けてくれた「大好き」という言葉がほしい。
 
 俺の思いも虚しく、結局その日はレイと仲直りができず、微妙な雰囲気のまま朝を迎えてしまった。
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