サルビアの育てかた
「ねえ、ヒルス。ひとつ訊いてもいい?」

 俺が一人勝手に狼狽えていると、レイは眉を八の字にしながら小首を傾げてくる。

「どうした?」
「あのね……ヒルスにとって、私って何なの?」
「えっ」

 俺は一瞬、言葉に詰まってしまう。

「俺にとってのレイは──」

 大切な人だよ。大好きで、誰よりも幸せになってほしい人だよ。世界一愛している人だよ。
 頭の中でこのような言葉が次々と飛び交うが、俺は寸前で口に出すのを止める。

 彼女に微笑みを向け、柔らかい声で囁いた。

「大事な家族だよ」

 本当は「妹」と言うべきなのかもしれない。だけど、俺の中でその言葉だけは口にしたくなかった。レイに嘘をつくようで、凄く嫌なんだ。

 こんな俺に、レイはふと口角を緩ませた。今日、初めて見た彼女の優しい顔。その表情を目にした瞬間、俺の心は踊り始める。
< 435 / 847 >

この作品をシェア

pagetop