サルビアの育てかた
「よし、少しずつ形は出来てきているな。両脚をもっとこうやって広げてみろ」
「やってみます」

 指摘されたところを、ひとつひとつ改善しようとロイは努めてくれる。
 だから俺の指導にも、熱が入るんだ。

 真面目にレッスンを受けてくれるロイのことは嫌いじゃない。むしろこういう姿勢の生徒は好きだし、吸収も早くて期待が持てる。
 どんなことがあっても、俺はロイのことを足蹴にしたりしない。

 小休憩に入ると、ロイは真面目な表情を解放するように、またいつもの爽やかな笑顔に戻るんだ。スポーツドリンクで喉を潤した後、タオルで顔を拭き取りながら俺の斜めに座って話をする。

「やっぱりヒルス先生のレッスンは良いですね。分かりやすいし、細かいところも指摘してくださいますし」
「いや、ロイののみ込みが早いからな。俺もやりがいがある」
「ヒルス先生にそう言ってもらえて本当に嬉しいです。あの日のイベントで、先生に出会えてよかった」

 ロイのその一言に、俺はまた思い出した。
 変わらない笑みを浮かべるロイをじっと見つめる。俺は、きっと神妙な面持ちを浮かべているだろう。
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