サルビアの育てかた
「先生、どうかしましたか」
「いや……気になることがあって」
「なんですか?」
「ロイが俺たちのダンスを見てくれたのって、孤児のイベントだと言っていたよな」
「はい、そうですね」

 俺はこれ以上問いかけない方がいいと思って口を一度閉じる。 
 しかし、ロイは平然とした様子で答えるんだ。

「ああ……先生の思っている通りですよ。ボクは親なしで、今もシスターの孤児院で暮らしています」
「え……?」
「ヒルス先生は信用出来る人ですから全然話しますよ。ボクは幼い頃生みの親に捨てられて、シスターの孤児院に保護されました。そして、五歳の時に里親に引き取られましたが、その親とも上手くいかなくて一年でまた孤児院に戻ったんですよ。……親という人たちに、二度も捨てられたんです。どうしようもないですよね」

 この時、ロイの瞳は寂しさの色に染まっていた。けれどその顔は、笑みを浮かべたまま。
 俺はどう返せばいいのか分からなくなってしまう。
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