サルビアの育てかた
 拍手喝采、スタンディングオベーションが送られる中、ステージはゆっくりと暗転していった。
 レイは汗だくになりながら、舞台袖に戻ってくる。

「レイ!」

 俺はたまらず笑顔で彼女を迎える。

「お疲れ。よくやったな!」
「ありがとう。ちょっと緊張しちゃった」
「緊張した? そんな風に見えなかったぞ。最高にクールなダンスだったよ」
「ヒルスのおかげで頑張れたよ」

 満足げに話すレイに、俺は汗拭き用のタオルをさりげなく手渡した。本当はバカみたいに撫で回してやりたかった。周囲にメイリーや他のダンサーたちがいる手前、さすがに我慢するが。それほど今日のダンスは最高すぎたんだ。

「ちょっと、レイ」
「あ……メイリー。この後本番だよね。頑張ってね」
「あなたにそんなこと言われなくてもしっかりと成果は出すから。今日のステージでちょっといい踊りをしたからって調子に乗らないでよねっ!」
「え……?」

 レイは戸惑った顔になる。
 なんだ、その言いかたは?
 俺は思わず眉間に皺を寄せる。メイリーが急に不機嫌な態度を取る理由が全く分からない。
 怪訝な表情をしたまま、メイリーはその場から立ち去ってしまった。

「なんなんだ、あいつ?」
「……本番前だから、きっとピリピリしてるんだよ。メイリー、いつも人一倍頑張ってるし」

 寂しそうな口調で、レイは不貞腐れるメイリーの後ろ姿を眺めていた。
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