サルビアの育てかた
「約束は関係ないよ。俺の気持ちの問題だから」

 眉を八の字にするレイは、綺麗な瞳を俺から逸らそうとはしない。そんなに見つめられてしまうと、俺の胸の鼓動が高まるばかりで止まらなくなる。
 レイから顔を背けようとするが、距離が近すぎてどうしようもない。

(ああ、クソ……。レイと手を繋ぎたい。抱きしめたいし、キスもしたくなる。そんなに見つめないでくれ)

 俺が心の中で喚いていると、レイは急にほくそ笑む。軽快に俺の隣に立ち、柔らかい指先で俺の左手をギュッと握ってきた。

「お、おい。レイ……」

 この時点で俺の胸は、彼女の耳に届いてしまいそうになるほどドキドキが激しくなる。
 そんな俺をよそに、レイはにこにこしながら小首を傾げた。

「あれ、駄目だった?」

 いたずらっぽく問いかけてくるレイ。その表情が最高に可愛らしくて、俺の気持ちがかき乱されそうになった。
 俺は大袈裟に首を横に振る。

「いや、駄目なわけない。……このままでいたい」

 自分でも引くほど甘えたような声質になってしまった。
 ああ、また兄らしくないことを。
 俺が内心後悔している隣で、レイは目を細める。それから、ゆっくりと頷くんだ。

「……私もだよ」
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