サルビアの育てかた
「今年、レイの誕生日はスタジオも休みだな。どこかへ出掛けるのか」
「観たい映画があるの」
「……誰と観に行くんだ?」
「えっ。ヒルスと行くんでしょう?」

 彼女は首を捻り、当然のようにそう言い放った。

 十七歳になる女の子が兄と二人で映画を観に行き、夜は『シャルル』のケーキを食べて誕生日を祝う。
 これは兄がすべきことなのか。完全にボーイフレンドの役割ではないのか?

 考えすぎて、俺の頭は今にもパンクしそうだ。無意識のうちに眉間に皺を寄せてしまう。

「ヒルス?」

 不安そうな表情で俺の顔を覗き込むレイが視界に入り、ハッとした。

「どうしたの。何か怒ってる……?」
「いや、違う。怒っているわけじゃないよ。少し考え事をしていただけだ」

 それでもレイの表情は浮かない。
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