サルビアの育てかた
 ──そのやり取りを思い出しただけで、俺は無意識のうちに大きなため息を吐いてしまう。どうしようもない気持ちのまま家で独りレイの帰りを待っていても、更に落ち込むのは目に見えていた。

 気を紛らわす為に訪れるような場所でないのは分かっている。それでも、ある所へ行き着くと俺は車を停めた。
 門の向こう側に、素朴でありながらもよく手入れされた庭が広がっていて、古びた遊具がいくつも並んでいる。更にその奥には、煉瓦で造られた二階建ての建物があり一階部分に明かりが灯っていた。
 雨の音で聞き取りづらいが、耳を澄ませば部屋の中から子供たちがはしゃぐ声が響いてくるのが分かる。

(シスターに会いたいな)

 雨に濡れる孤児院を眺めながら、俺は心の中で呟いた。

 ロイの件でも色々気になることがある。だけど突然訪問なんてしたら迷惑ではないか。そもそも俺の私情で、勝手にロイの個人的な事情を聞くのも良くないのではないか。
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