サルビアの育てかた
ロイとシスターが出会ったのは、今から十年ほど前の話。
ある日商店街へ買い物に出かけていたシスターは、小さな男の子──当時四歳のロイ──が果物屋で店主に怒鳴られている現場を目撃した。
ロイの小さな手の中にはりんごが一つ。それを指差して「金がないのにどういうつもりだ」と目くじらを立てて叫ぶ店主の姿があった。
どうやらこの子は万引きをしようとしてしまったのだろう、とシスターはすぐさま察する。
涙目になって何も言えないでいるロイに近づき、シスターは優しく声を掛けたのだ。
「君、悪いことだって分かる?」
「……うん」
ロイは小さく頷いたが、とても元気のない暗い声だった。
「りんごのお代はわたしが支払います。どうかお許しを……」
その場は何とか店主の怒りを鎮めたが、ロイの様子を見てシスターは心配になった。
「お腹が空いているの?」
「……うん」
「お父さんとお母さんはどこ?」
「ぼくにおとうさんはいないよ」
「……そうなの。それじゃあお母さんは?」
「おかあさんは、わからない」
「分からないって?」
シスターは首を捻るが、ロイはそれ以上の話はしてくれない。りんごを大切そうに握りしめ、ロイは逃げるようにその場を立ち去ってしまったのだ。
あんなに小さな男の子が一人で外を歩いているのはおかしいし危険だ。シスターは必死になってロイの姿を追うが、結局彼の姿を見失ってしまう。
ある日商店街へ買い物に出かけていたシスターは、小さな男の子──当時四歳のロイ──が果物屋で店主に怒鳴られている現場を目撃した。
ロイの小さな手の中にはりんごが一つ。それを指差して「金がないのにどういうつもりだ」と目くじらを立てて叫ぶ店主の姿があった。
どうやらこの子は万引きをしようとしてしまったのだろう、とシスターはすぐさま察する。
涙目になって何も言えないでいるロイに近づき、シスターは優しく声を掛けたのだ。
「君、悪いことだって分かる?」
「……うん」
ロイは小さく頷いたが、とても元気のない暗い声だった。
「りんごのお代はわたしが支払います。どうかお許しを……」
その場は何とか店主の怒りを鎮めたが、ロイの様子を見てシスターは心配になった。
「お腹が空いているの?」
「……うん」
「お父さんとお母さんはどこ?」
「ぼくにおとうさんはいないよ」
「……そうなの。それじゃあお母さんは?」
「おかあさんは、わからない」
「分からないって?」
シスターは首を捻るが、ロイはそれ以上の話はしてくれない。りんごを大切そうに握りしめ、ロイは逃げるようにその場を立ち去ってしまったのだ。
あんなに小さな男の子が一人で外を歩いているのはおかしいし危険だ。シスターは必死になってロイの姿を追うが、結局彼の姿を見失ってしまう。