サルビアの育てかた
後日ロイの母親となんとか連絡を取ったシスターは、孤児院で面談の約束を取り付けた。
母親は孤児院に来るなり「面倒だから早く終わらせて」「ボーイフレンドを待たせているから」 などと言って、温厚なシスターでさえも苛々してしまうような酷い態度であったという。
それでもシスターは自らの心情を表に出さずに、丁寧に母親と話をした。
「ロイ君のことでお話があります」
「うん、何か問題あった?」
「彼はいつもお腹を空かせています。商店街で食べ物を盗もうとしているところを何度も見掛けました。お母様はその件について、どう思われますか?」
「どうって……知らないわよ。あいつが勝手にしたんでしょ?」
「ロイ君はあなたが帰ってきてくれないと言っています。普段、ロイ君の食事はどうされているのでしょうか」
「適当にパンとか置いていってるわよ。足りなくなったらまた家に寄ってテーブルに置いていくし」
「……お母様は随分お忙しいのですね? お仕事が大変なのですか?」
「仕事? 仕事はしたりしなかったりかな。彼が全部お金出してくれるし」
「……それではなぜ、ロイ君のそばにいてあげないのですか」
「いや、彼があたしに会いたいって言うからさ。あの人、ガキが嫌いだし。だからロイに留守番してもらってるの。大丈夫よ、ロイはいい子だから一人で留守番出来るし、文句も言わないしね」
「そういう問題ではないんですよ、お母さん。ロイ君はまだ四歳です。彼にはあなたが必要なのですよ」
「はあ。もう、しつこいなあ。そんなこと、ロイが言ったわけ? 関係ない人があたしたち親子のことに首突っ込まないでくれる? とにかくロイが腹減ってるなら、もう少し多めにご飯のストック置いていくから。そうすればあとは自分で何とかするでしょう? 彼を待たせてるの。もう行っていいですか?」
「……そうですか。分かりました」
その時、シスターはこう思った。
──この母親は、自分が親という自覚がまるでない。
これは立派なネグレクトだ。母親が今の生活態度を正さないのなら、ロイを孤児院に引き取ることも視野に入れるしかない、と。
その後もシスターは幾度となく母親と面会を重ねたが、一切聞く耳を持たずに終わる。
男に取り憑かれた、親になりきれない女だったのだ。
正式にロイを孤児院に引き取られることが決定しても、女はすんなりと受け入れ、二度とロイの前に姿を現すこともしなかった。
母親は孤児院に来るなり「面倒だから早く終わらせて」「ボーイフレンドを待たせているから」 などと言って、温厚なシスターでさえも苛々してしまうような酷い態度であったという。
それでもシスターは自らの心情を表に出さずに、丁寧に母親と話をした。
「ロイ君のことでお話があります」
「うん、何か問題あった?」
「彼はいつもお腹を空かせています。商店街で食べ物を盗もうとしているところを何度も見掛けました。お母様はその件について、どう思われますか?」
「どうって……知らないわよ。あいつが勝手にしたんでしょ?」
「ロイ君はあなたが帰ってきてくれないと言っています。普段、ロイ君の食事はどうされているのでしょうか」
「適当にパンとか置いていってるわよ。足りなくなったらまた家に寄ってテーブルに置いていくし」
「……お母様は随分お忙しいのですね? お仕事が大変なのですか?」
「仕事? 仕事はしたりしなかったりかな。彼が全部お金出してくれるし」
「……それではなぜ、ロイ君のそばにいてあげないのですか」
「いや、彼があたしに会いたいって言うからさ。あの人、ガキが嫌いだし。だからロイに留守番してもらってるの。大丈夫よ、ロイはいい子だから一人で留守番出来るし、文句も言わないしね」
「そういう問題ではないんですよ、お母さん。ロイ君はまだ四歳です。彼にはあなたが必要なのですよ」
「はあ。もう、しつこいなあ。そんなこと、ロイが言ったわけ? 関係ない人があたしたち親子のことに首突っ込まないでくれる? とにかくロイが腹減ってるなら、もう少し多めにご飯のストック置いていくから。そうすればあとは自分で何とかするでしょう? 彼を待たせてるの。もう行っていいですか?」
「……そうですか。分かりました」
その時、シスターはこう思った。
──この母親は、自分が親という自覚がまるでない。
これは立派なネグレクトだ。母親が今の生活態度を正さないのなら、ロイを孤児院に引き取ることも視野に入れるしかない、と。
その後もシスターは幾度となく母親と面会を重ねたが、一切聞く耳を持たずに終わる。
男に取り憑かれた、親になりきれない女だったのだ。
正式にロイを孤児院に引き取られることが決定しても、女はすんなりと受け入れ、二度とロイの前に姿を現すこともしなかった。